【解答】川崎市立川崎高等学校附属中学・適性検査Ⅱ|作文の模範解答を作成しました!

川崎学舎の門野坂です。

市立川崎高校附属中学(以下、市川)の作文問題を解きました!

市川だけではなく作文問題って、解答が「省略」になっていることが本当に多い……

学校側も「これが正解だ」と提示してしまうと、それがパターン化されてしまい、本質的な思考力を測れなくなるという懸念があるのだと思いますが、対策しようとしている小学生は困りますよね。

そこで今回は、僕の方で模範解答を作成してみました。

参考にしていただければ幸いです。

■参考|川崎高等学校附属中学校の適性検査問題


問題

次の文章を読み、問題に答えましょう

あなたはクラスで卒業式前に行われる学習発表会のリーダーをしています。学習発表会では、「自分たちの成長を伝える」という大きなテーマがあり、そのテーマにふさわしい発表として、クラスでどのようなものにするかについて各班で話し合うことにしました。各班から出された案の中から、

A 6年間をふりかえり、どのように自分たちが成長してきたのかを劇で発表する案

B 最高学年としての1年間どのように自分たちが成長してきたのかを劇にして発表する案

の2案が最終的に残りました。どちらか1つに決めようとしましたが、意見が割れ、なかなか決まりません。話し合いが長引くうちに、「じゃんけんで決めればいいのではないでしょうか。」などの解決方法を提案する人が出てきたことで、クラスは2つのグループに分かれて言い争いまで起こってしまいました。

問題

おたがいが納得して発表内容を決めていくために、あなたは学習発表会のクラスのリーダーとして、どのような声かけをし、具体的にどのような行動を取りますか。また、なぜそのようにするのか理由も書きましょう。

【注意事項】
〇解答用紙に縦書きで書きましょう。
〇解答用紙に300字以上400字以内で書きましょう。
〇原稿用紙の正しい用法で書きましょう。また、漢字を適切に使いましょう。
〇はじめに題名などは書かず、1行目、1マス空けたところから書きましょう。自分の名前は、氏名らんに書きましょう。
〇3段落以上の構成で書きましょう。
〇句読点(。や、)やかっこも1字に数え、1マスに1字ずつ書きましょう。また、段落を変えたときの残りのマス目も字数として数えます。


模範解答

 私は「全員が一生懸命考えられている状況は素敵なことなので、二つの方法の良さを改めて確認しませんか。もし可能なら、A案でもB案でもない、それぞれの良さを含んだ新たな案をつくりましょう。新たな案をつくることができなくても、お互いが納得できるような前向きな話し合いにしましょう。」と声をかける。

 次に、同意が得られたかクラスメイトに確認し、意見がある人がいればその話を聴いて調整を図る。また先生に、意思決定までに使用して良い時間を確認し、話し合いに使える残りの時間を配分する。四人班を作成し、時間を決めて紙やタブレットに意見を集約する。先に決めた時間で話し合いを進め、合意形成を目指す。時間の制約がある場合には、出来るだけ多くの意見を全員が聴き合った状態で、多数決をすることも検討する。

 納得とは、目的に同意した状況で、各々が関与し、公正な手続きを経た決定に生まれるものだと考えるため、上記のような行動をする。(400文字)


令和7年度|解答解説

川崎中の教育目標は「こころ豊かな人になろう」です。

また育てたい生徒像を

①自らの能力と個性を伸ばす高い志をもち、将来の進路希望の実現に向けて主体的に学ぶ生徒

②表現力やコミュニケーション能力を養い、多文化共生の視点をもって国際社会で活躍する生徒

③豊かな感性や人権感覚を身につけ、共に支え生きる社会の担い手として活躍する生徒

と3点掲げている川崎中の適性検査では、思考力・表現力・社会性が求められます。

1.どのように声をかけるか

 特に「表現力」が問われる部分です。優等生っぽさを避けつつも、友人に対して真剣に語るならこうするかなと想像して模範解答を作成しました。

 公立中高一貫校では、クラスの中でどのように振る舞うかを回答する問題自体は、よく出題されます。他の学校の過去問や対策テキストの中でも、クラスの状況が設定され、行動を記述する問題に触れる機会があるはずです。

 しかし、このように具体的な声かけまで要求するのは川崎中ならではだと思います。例年の川崎中の問題は、考え方を記述することに終始していましたが、令和7年度からは1歩踏み込んで、実際の人間関係をリアルに捉えられているかを問うてきている印象です。

僕の模範解答では、そういった現実のクラスでの人間関係を想像できていることを押し出したいため、敢えて長い台詞で、人間読解の解像度の高さをアピールしています。

 こういった力は小説を精読したり、普段の学校生活の中で友だちと関わる中で起きた出来事を振り返って言語化したりする習慣によって徐々に形成されていくものです。川崎学舎の文系は、読書・作文を課しています。市川の合格、そしてその先の生活の中で、表現力の高さゆえに良い人間関係を築き、社会のことを考える優しい子になってほしいからです。

2.具体的にどのような行動を取るか

 「社会性」が大きく問われる領域です。普段のクラスや遊び、あるいは習い事の中で、他者とどのように関わっているかがよく現れるでしょう。

 このようなクラスでの具体的な行動を求められるのは、市川だけではなく公立中高一貫校の特徴です。しかし、前述した通り、近年の市川ではより具体的な人間関係についての論述が求められています。問題形式が変わった令和6年度では「自分が望んでいた委員会に入ることができない状況で、あなたはクラスや学校のためにどのように行動しますか」という作文問題が出題されていますが、令和7年度の問題では声かけが聞かれるなど、もっともっと複雑な人間関係の中でどのように振る舞うかというリアリティの高い行動が求められていると分析することができます。

 2段落では、自分が立派なスピーチをするだけではなく、みんなの意見を聞いて調整する態度があること。時間を尋ね、自分勝手ではなく担任のクラス経営にも考慮する視野の広さがあること。そして、出来るだけ全員が参画できる組織づくりをしようと願う素養があることなどが総称された力としての「社会性」をアピールするという意識で文章を作成しました。

 日本の公立小学校に通っていれば、係活動・クラブ活動・委員会・宿泊旅行などでリーダーになる機会が多く設けられています。その中で、人間関係や運営に悩み、どのようにすればより良い運営ができるかを考察する態度が「みんなのために何ができるか」という「社会性」の涵養につながります。川崎学舎の小学生たちには、学校生活の中でどのようなことに悩み、次はどのような手立てで学校の友人と関わることが良いだろうかと問いかける時間を取っています。

3.理由を書く

 「思考力」に関するセクションです。「納得ってなんだろう」「自由ってなんだろう」「人はどのように行動しているのだろう」——。こうした問いを言葉にして残す経験の積み重ねで、段々と記述することが可能になっていきます。

 このような哲学的な問いに対して、言語化していく問題は、旧来の市川の問題傾向からほとんど変わっていません。過去問題の中でも「あなたにとって読書の価値とは何か」「あなたにとって学ぶことは何か」など、思考力が問われるような問題が出題されています。

 今回、令和7年度の模範解答を作成する際には、短い文章で思考力の深さをアピールできるように配慮しました。僕個人の見解では、今回の問題ではリアリティのある解像度の高い人間関係が求められていると分析しているので、戦略的に1・2段落の記述に文字数を割いています。3段落は、400文字という限られた文字数の中で、1文で解答するしかないのかなと思います。

 納得についての哲学を述べさせてもらいましたが、まるで詩のような抽象的な格言を普段から述べていく練習が、限られた文字数の中で情報量の多い言語化の助けになります。普段から新書やエッセイを読んだり、概念に対して一定の見解を出す言語化トレーニングしたりすることが大切ですね。


市立川崎中の魅力

実際に市立川崎中には、何度も足を運んでいますが、生徒の皆さんの表現力の高さには驚かされます。スピーチも上手ですし、対話しながら学び、プロジェクトの解決を一緒に目指す姿がとても印象的です。現代的な学び方・働き方になるのだろうなという未来の姿を予感させてくれますね。

市川は何よりも教育理念が素晴らしいと思い、深く共感しています。教員免許を持っているのですが、もし可能なら市川のような学校で教えたいですね。

僕自身、小学校時代の学びというのは「いろんな経験をし、その経験から自分と他者と社会を深めていくこと」こそ大切だと常々思っています。

川崎学舎では、対話的な勉強を取り入れることはもちろん、敢えてみんなで公園に遊びに行ったりしています。日常生活の中での人との関わりの中から、思いやりと考える力を育て、学びが結果的に他者を支えることにつながるような学力と人間力の往還を意図しているからです。


川崎学舎のHPをチェック

川崎学舎では、市立川崎中徹底対策講座を各学年7名まで開講しています。ありがたいことに、ここ数年はすぐに募集が埋まる状況となりました。小学4年生以下の方は、ぜひHPをチェックしてみてください。

また、2026年1月17日(土)に新学年説明会を予定しています。ご都合を空けていただければ幸いです。

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